「新しい時代-new era- ~Innovation 3.0~」(2017年1月1日)

2017年度啐啄同時は「新しい時代~innovation3.0~」をテーマに、近代の時代背景を紐解きながら、新しい時代を切り拓くために必要な「イノベーション力」について連載します。



「新しい時代-new era- ~Innovation 3.0~」


明けましておめでとうございます。
我々アミタグループは、おかげさまで今年、創業40周年を迎えることができました。これもひとえに皆様のお力添えによるものと、心より感謝申し上げますとともに、引き続きのご支援ご鞭撻をなにとぞよろしくお願い申し上げます。

昨年は、イギリスのEU離脱宣言やアメリカ合衆国の大統領選などの影響により、世界情勢やグローバル金融市場は常に不安定な状態でした。
先行きの見えないこの時代に、企業が世界市場で戦い抜いていくためには、厳しい制約条件と不確定要素の中から新たな価値を創造する「イノベーション力」が必要です。
我々アミタグループは創業以来、社会ニーズを市場のニーズに変え、社会をより良くするための事業を創造してきました。例えば、リサイクルという言葉もなかった時代に、焼却埋立されていた廃棄物を100%活用して新たな資源を製造する。これも一つの「イノベーション」と自負しています。

今年の啐啄同時は、1年を通し「Innovation 3.0-社会革新-」で切り拓く「新しい時代-new era-」について、近代の歴史や時代背景を 紐解きながら6回の連載でお伝えしたいと思います。時代の閉塞感を打破する為の設計を世に問い、多くの企業・自治体の方々と共に「持続可能な社会」を作りたいと思っています。

どうぞよろしくお願いいたします。
今日は、連載開始前の前段として、私が目指す社会像がどういったものかを、時代考察を踏まえて少し書いてみたいと思います。

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miraichildren1.jpg現在、世界はアメリカ一極化の時代から多極化の時代に向かい、世界情勢は専門家にも予測がつかない状態です。そして、グローバル経済の世界では、金融市場と実体経済とのかい離が大きくなり(世界のGDP総計と店頭デリバティブ取引残高の差は約9倍)、いくら金融政策を打っても実体経済は動きません。
いまや公平性を失った資本主義とグローバル金融経済によって、先進国でも多くの人たちが自分たちの生活に、そして未来に不安を感じています。これを払しょくし、生命をつかさどる「自然資本」と人間性を豊かにする「人間関係資本」が持続的に増加するような【共存経済】の実現可能性について、考えてみましょう。


今、日本人は人類史上はじめての社会を経験しています。
「物質的な飢餓貧困の追放」を達成したにも関わらず、精神的満足は得られず、孤独という精神的な飢餓貧困が蔓延しています。先進国として超高齢化社会へいち早く突入し、年金・累積債務・少子高齢化・エネルギー・原発問題、地域衰退、介護・医療費の増加など、いつのまにか「課題先進国」となってしまいました。これらは、いずれ多くの国が直面する問題でもあります。

では、これらの社会的課題の解決につながる社会的予兆はないのでしょうか?
人類の軌跡を振り返ると、ちょっと面白いことが分かりました。はるか昔、狩猟採集の時代、人々が生きていくために働いていた時間は年間700時間ほどと言われています。その他の時間は、歌を唄ったり、昼寝をしたりしていたようです。次が農耕文明の時代。この時代の労働時間は、倍の1400時間。余暇は狩猟採集時代の真似をするかのように釣りや栗拾いなどに興じました。そして、工業文明の時代、労働時間は狩猟採集時代の3倍、2100時間!ほとんど遊びの時間がありませんね。それでも僅かなお休みに、人々はガーデニングや散歩を楽しみ、また観葉植物などを室内で育て癒しを得ています。まるで農耕時代の名残のように。
そして今、急激に発達するIT技術の中で、ドローンや3Dプリンター、自宅用のオンデマンド印刷やロボットの個人製作など、工業を遊びにする人たちが増えてきました。つまり、ポスト工業文明の予兆は既に始まっているのです。
そう、時代は、次の扉を開けつつある。そして、次なる文明は、現代の社会課題である「精神的飢餓貧困」を解決し、孤独を追放するものであるべきです。
具体的には、

  1. 超高齢社会における高齢者の駆動力化。 高齢者による社会への価値創出
  2. 制約条件下における豊かさの追求。資源・エネルギー・食料の不安からの解放
  3. 税収低減による社会保障の劣化に対する対処。自治力再構築

この3施策が、「共存経済」の土台となると考えます。
これを実現するためには、現代社会の基礎となった近代文明をひも解き、根本的に見直し、再構築することが必要です。

では、そもそも時代とは、何によって形作られるものでしょうか?
私は時代の要素を、大きく「技術革新」「人口動態」「社会価値」に分類しています。

次の時代に最も影響を与える技術革新はICT(情報通信技術)でしょう。電脳社会はどのような社会影響を生み出すのでしょうか?人口動態も、これまでと違う傾向を示しています。高齢化して収縮する先進国と膨張する発展途上国の社会影響とはどんなものでしょうか?
そして世界的な気候変動、資源・エネルギー・食料の制約条件等は、社会の不確実さを増し、そのストレス値は上がっていく一方です。そのような社会に、人々が求める真の価値とはいったい何でしょうか?

今、最適なエネルギーや最適な原料調達を実現する製造業の革新「インダストリー4.0」の議論が始まっています。将来、大多数の企業がこれを実現できれば、ビジネスの世界から時代の方向が定まっていくことでしょう。また、地域における自然と人が共生できる域内循環のモデルが確立すれば、人々の暮らしからそれが叶うことでしょう。その2軸が交われば、国や政治や外的要因に頼らず、民主導で孤独を追放し、自ら安心を手に入れられるような新たな経済の成り立ちすなわち【共存経済】が実現するかもしれません。

2017年の本稿では、このテーマを掘り下げていく年にしたいと思います。
1月10日に、連載第1回を掲載予定です。どうぞお付き合いください。


2017年1月1日
アミタホールディングス株式会社
代表取締役会長兼社長 熊野英介

「啐啄同時」に対するご意見・ご感想をお待ちしております。
下記フォームにて、皆様からのメッセージをお寄せください。
https://business.form-mailer.jp/fms/dddf219557820

会長メッセージ


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※2013年3月11日より、会長・熊野の思考と哲学を綴った『思考するカンパニー』(増補版)が、電子書籍で公開されています。ぜひ、ご覧ください。

※啐啄同時(そったくどうじ)とは

 鳥の卵が孵化するときに、雛が内側から殻をつつくことを「啐(そつ)」といい、これに応じて、母鳥が外から殻をつついて助けることを「啄(たく)」という。 雛と母鳥が力を合わせ、卵の殻を破り誕生となる。この共同作業を啐啄といい、転じて「機を得て両者が応じあうこと」、「逸してはならない好機」を意味する ようになった。

 このコラムの名称は、未来の子どもたちの尊厳を守るという意思を持って未来から現代に向けて私たちが「啐」をし、現代から未来に向けて志ある社会が「啄」をすることで、持続可能社会が実現される、ということを表現しています。