アミタグループの中長期戦略

時代認識

戦後長らく日本経済をけん引してきたモノづくり中心の産業モデルは、エネルギーや各種原料、食糧などを世界中から安価かつ大量に安定調達できるグローバルサプライチェーンを前提としていました。

しかし、この大量生産・大量消費・大量廃棄の産業モデルは、経済発展と引き換えに、環境汚染や資源枯渇、人間関係の劣化など多くの社会課題を生み出しました。そして今、世界規模で気候変動や資源問題が深刻化し、感染症はもとより、戦争や紛争の要因の一つにもなっています。経済発展の大前提であったグローバルサプライチェーンは不安定化し、資源エネルギー価格の高騰や各国の輸出制限など、企業の調達リスクはかつてないほど顕在化しています。

さらに日本は世界に先駆け、人口減少と少子高齢化の課題を抱えています。エネルギー・原材料費に加え人件費が高騰する一方で市場は縮小するこれからの時代、これまでの産業モデルでは、持続的に経済と社会を発展させていくことは不可能です。

上記の課題に対するアミタグループの答えは、「発展すればするほど人間関係資本と自然資本が増幅するエコシステム社会」の構築です。エコシステム社会とは、生態系の「動的に変化しながら全体として最適な状態を維持する」特徴を取り入れた、無駄のない循環型の社会です。

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エコシステム社会の構築のカギは回転(循環)です。最小投資で最大の価値を創出するには、
1.無駄のないサービスを可能とする需要予測
2.モノの提供から機能を提供するサービサイジング型のビジネスモデルへの移行
3.ローカル調達を可能とするサーキュラーサプライチェーン
が必要となります。

これにより企業は「作った分を売る、売り切り・使い切り」の従来型ビジネスモデルから「需要予測に基づいてローカルで調達した再生資源から製品を作り、その製品の機能を何回転も提供する」といった持続的なESG型のビジネスモデルへの移行を実現できます。さらにESG型なビジネスモデルによる市場の共感を得ることで、広告宣伝費や人件費などの固定費と売上原価などの変動費を削減することができ、需要が縮小する中でも利益率を高めることが可能になると考えます。

中長期戦略

アミタグループは、この2つを叶える「サーキュラー・プラットフォーム=MEGURU PLATFORM(めぐるプラットフォーム)」の構築を長期の事業戦略としています。MEGURU PLATFORMは、互助共助コミュニティ型の資源回収ステーション「MEGURU STATION®(めぐるステーション)」と、良質な資源と情報が集まるサーキュラーマテリアル製造所「MEGURU FACTORIES(めぐるファクトリーズ)」から構成されます。

小学校区単位に1箇所を目途に設置するMEGURU STATION®は、地域住民の関係性を再構築する互助共助のコミュニティステーションであると同時に、家庭からの資源回収と、資源に紐づく情報収集(利用者の行動情報、回収資源の種類・量など)の機能を併せ持ちます。

MEGURU FACTORIESは、MEGURU STATION®から回収された資源を加工・再利用し、再生資源として企業等に安定供給するサーキュラーマテリアル製造所(循環資源製造所)です。

アミタグループは、集めた資源によりローカル調達を支援するとともに、資源に紐づく情報(ビッグデータ)を分析・活用することにより、企業や自治体へ地域特性などを加味した需要予測を提供します。

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MEGURU PLATFORMを成立させるためには、MEGURU STATION®の設置数と、地域内で極力資源を循環させる仕組みづくりが重要になります。そのために、地方自治体の4大課題(人口減少、少子高齢化、社会保障費の増大、雇用縮小)を「関係性の増幅」と「循環の促進」で解決する「Co-Creation City(コ・クリエーションシティ構想(以下、CCC構想)」というまちづくりコンセプトを自治体へ提言します。環境や福祉など個別課題へのソリューションとしてではなく、まちづくり政策の実現手段としてMEGURU STATION®を位置づけることにより、面的な展開を狙います。

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集めた情報の蓄積・活用に関してはNTTコミュニケーションズ(株)と、集めた資源の加工・活用についてはJ-CEP(*1)やCLOMA(*2)と、MEGURU STATION®の利用価値向上については三井住友信託銀行(株)やBELLグループ(防災事業)と連携するなど、パートナーシップによりMEGURU PLATFORMの構築を推進します。

(*1) J-CEP:ジャパン・サーキュラー・エコノミーパートナーシップ。サーキュラーエコノミーに取り組む企業連合。
(*2) CLOMA:クリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンス。海洋プラスチックごみ問題の解決を目指す企業アライアンス。

2030年までのロードマップと2024~2025年度の重要取り組み

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2024年2月、2020年に策定したロードマップを変更、再設計しました。当初は2021~2023年を市場創造期、2024~2026年を市場展開期、2027~2029年を市場拡大期と設定しており、市場創造期には以下3点の目標を掲げておりました。

  • 社会デザイン事業の商品開発
  • 収益構造の改善・改革
  • 組織・企業文化の再構築
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しかし、社会デザイン事業を推進するための商品戦略、営業戦略、組織戦略に課題があり、社会デザイン事業の商品開発(業態改革)が、市場創造期中の完了に至りませんでした。業態改革を完遂するために2024~2025年を基盤整備期と新たに位置づけました。

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基盤整備期の2年間では、社会デザイン事業の中核サービスであるCyano Project(シアノプロジェクト)を中心に事業や商材間のシナジーを創出する業態改革を完了させ、収益安定化を目指します。2026年からの市場展開期ではCCC構想によってMEGURU STATION®の展開を進め、2028年からの市場拡大期でMEGURU PLATFORMの稼働を目指します。2030年には、MEGURU PLATFORMによる事業を確立させ、エコシステム社会の実現を目指します。

基盤整備期には、以下5つを重要戦略として取り組みます。

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商品が最大限に売れる状態づくりとして、Cyano Projectの商品性向上、マーケティング強化に取り組みます。具体的には、工場向けパッケージ等をはじめとした、100%再資源化サービスや廃棄物管理システム/アウトソーシングサービスなどを統合提供できる商材開発や、啓蒙・広報と営業・販売の連動により、共感を軸とした顧客との長期的なパートナーシップを構築するバリューマーケティングに取り組みます。またMEGURU STATION®を活用した実証実施によって戦略や計画を具体化することで、顧客の本質的ニーズである循環型ビジネスへの移行を推進します。

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また、三井住友ファイナンス&リースグループとの合弁会社であるサーキュラーリンクス株式会社においては、両社が提供するサービスを継続しながら、2028年の売上目標10億円に向けた新事業の開発に注力します。海外事業では、新規開拓によるマレーシア事業の収益を伸ばしながら、2027年を目途としたインドネシアにおける事業化準備を進めます。

数値目標と事業進捗予測

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基盤整備期の数値目標

(単位:百万円/
百万円未満切捨て)

2023年
(実績)
2024年 2025年
売上高 4,536 4,809 5,070
営業利益 472 540 651
経常利益 530 599 731
当期純利益 308 371 489
(営業利益率) (10.4%) (11.2%) (12.8%)
(経常利益率) (11.7%) (12.5%) (14.4%)

【2024~2025年度】

  • バリューマーケティング確立・Cyano Project商品力強化・提供拡大
  • 半導体産業の新規投資増加によるシリコン再資源化の伸長
  • マレーシアにおける社会デザイン事業の展開
  • サーキュラーリンクス(株)における新事業開発

【2026年度以降】

  • Cyano Projectが業績向上を牽引
  • サーキュラーリンクス(株)のサービス伸長
  • インドネシアにおける再資源化事業の収益化
  • MEGURU COMPLEX導入
  • MEGURU PLATFORM稼働開始

(次回更新は2025年2月を予定しています)