「地域のネイチャーポジティブ活動の手引きVer. 1.0」を公開 -ランドスケープアプローチで導く自然の保全・回復と地域の価値創造-
![]() |
![]() |
![]() |
発表のポイント
- 地域に特化した実践ガイド「地域のネイチャーポジティブ活動の手引き1.0」を公開しました。
- 本手引きは、自然の保全・回復と地域の価値創造を同時に目指す個人や組織を主な対象としています。
- 小さな組織から地域全体まで、段階的にネイチャーポジティブ活動を広げ、地域の方針づくりに反映するプロセスを4章構成で解説しています。
概要
アミタホールディングス株式会社(本社:京都府京都市 代表取締役社長 兼CIOO:末次貴英)は、東北大学大学院生命科学研究科の近藤倫生教授がプロジェクトリーダーを務める「ネイチャーポジティブ発展社会実現拠点」(以下、NP拠点)と共同で、『ネイチャーポジティブ活動の手引き Ver.1.0 ― ランドスケープアプローチで導く自然の保全・回復と地域の価値創造 ―』を公開しました。
NP拠点では、2030年までに自然の劣化を回復基調に転じる「ネイチャーポジティブ」(注1)の理念に基づき、自然の価値の見える化、自然資本への資金流入の加速、寄与できる人材の育成を進めています。本手引きは、これらのビジョンを地域で実現するために、多様な主体が協力し、誰もが参加しやすく、実効性のある自然再生を進めるための基本指針です。
詳細な説明
背景
近年、企業、自治体、地域コミュニティなど、あらゆる主体がネイチャーポジティブの重要性を認識し、計画策定や具体的な取り組みを始めています。
一方で、自然の保全・回復と地域の産業や暮らしとの関係性への理解が十分でないことや、関係者の参画、科学的根拠に基づく活動の実施が難しいことなど、さまざまな課題に直面しています。
本手引きでは、ネイチャーポジティブを「未来への投資」と位置づけ、自然と地域の産業・暮らしを一体として捉えるランドスケープアプローチによる進め方を提示しています。これにより、地域のステークホルダーが協力し合い、「望ましい自然のあり方」を共有し、行動へとつなげるための共通基盤となることを目指しています。
今回の取り組み
ネイチャーポジティブ活動は、最初から完璧に実践することは容易ではありません。本手引きでは、「課題把握 → 計画 → 実行 → 改善」の4ステップで小さく始め、改善を重ねながら最終的に地域戦略に反映していくスパイラルアップ型の進め方を示しています。また、「回避 → 軽減 → 再生 → 変革」というミティゲーション・ヒエラルキー(注2)が推奨する優先順位づけを明確にし、科学的根拠と地域の合意形成を両輪とした、実効性の高い目標設定と活動展開を支援します。
手引きの特徴は次の5つです。①自治体や地域にネイチャーポジティブの取り組み基盤がなくても、第一歩を踏み出せる構成にしています。②実行の意思をもつ組織や地域に対し、着手から推進までを詳細な手順の提示で実務的に支援します。③ランドスケープアプローチを軸に、自然・産業・暮らしを統合的に捉えた指針を提示しています。④ネイチャーポジティブと地域活性化の好循環を生み出す社会への移行を促します。⑤TNFD、LEAPアプローチ、ISO 17298などの国際基準との対応表を掲載し、国際的な整合性を確保しています。
このような特徴を持つ手引きによって、地域のステークホルダーが協力し、誰もが参加しやすく、確かな効果を生むネイチャーポジティブ活動の共通基盤となることを目指します。
今後の展開
「地域のネイチャーポジティブ活動の手引き Ver.1.0」は、NP拠点が取り組む地域サイトでの活動にも活用していくことを検討しています。NP拠点では、富山県・黒部川流域など複数の地域でネイチャーポジティブの活動を展開しており、こうした地域で参考テキストとして利用し、より実効性の高い内容へのアップデートを実施する予定です。
- アップデートを目指して利用者からのフィードバックも募集しております:
https://business.form-mailer.jp/fms/cd2553fa318645
- 「地域のネイチャーポジティブ活動の手引き Ver.1.0」ダウンロードフォーム:
https://amita.web-tools.biz/naturepositive2025/
関係者コメント
アミタホールディングス株式会社
代表取締役社長 兼 CIOO 末次貴英
私たちは創業以来、資源や価値を無駄なく循環させる「循環」と、誰も置き去りにしない「包摂」の仕組みを軸に、持続可能社会の実現を目指してきました。そして、今回公開した「地域のネイチャーポジティブ活動の手引き Ver. 1.0」は、この理念を自然回復の現場で具現化する画期的な取り組みです。
完璧を求めずに小さく始め、立場を超えた対話を重ねながら育てていく。このプロセス自体が、人と人、人と自然のつながりを取り戻す営みになると確信しています。地域から始まる実践が、やがて社会全体の変革につながることを期待しています。
NP拠点 拠点長
東北大学大学院 生命科学研究科 統合生態研究室
教授 近藤 倫生
ネイチャーポジティブの実現には、科学・社会・地域が共に問い、考え抜き、答えを育てるプロセスが大事です。唯一の正解があるわけではなく、関係者それぞれの価値観や現場の知恵を尊重しながら、未来に向けた合意を築いていく必要があります。
この手引きは「自然と人の関係を編み直す」ための共通言語であり、また、不確実で複雑な社会課題に挑戦する変わりゆく科学のかたちを後押しする一歩でもあります。科学が、情報提供者に留まるのではなく、対話を促し、行動を後押しする力になるべき時代です。私たち科学者もこの手引きを手に、地域・行政・企業とともにネイチャーポジティブの実装に挑んでいきます。
参考情報
アミタホールディングス株式会社
1979年の創業以来、「発展すればするほど自然と人のつながりが豊かになる持続可能社会の実現」をミッションに掲げ、環境問題や孤独問題などの社会課題の解決に取り組んでいます。具体的には、企業のサステナビリティ経営への移行戦略支援・実行支援、森林や海を守る環境認証審査、循環型のコミュニティデザイン支援、アジア・大洋州地域における海外事業等を展開しています。特に環境認証審査においては、1999年から日本初のFSC®森林認証審査会社としてサービス提供を開始し、その後も海洋資源の持続可能性を証明するMSC/ASC認証などを提供してきました。これらを通じて、企業や地域のネイチャーポジティブへの貢献を評価・支援することで、自然資本の適切な管理と持続可能な利用を促進しています。
(ウェブサイト https://www.amita-hd.co.jp/)
東北大学ネイチャーポジティブ発展社会実現拠点
自然の劣化を回復基調に転じる「ネイチャーポジティブ」の理念に基づき、アカデミア、金融・ビジネスセクター、自治体、市民等を巻き込んだ包括的なアプローチで、国際的な社会変革をリードする拠点です。自然の高度な科学的理解に基づく自然の価値の可視化、ネイチャーポジティブに資する基礎・応用研究の促進、自然資本への資金の流れの加速および産業の創出、社会のシステムや制度設計への貢献、専門知識を備え地域で活躍する人材の育成や起業促進等を、一体的かつ効率的に展開しています。アンダーワンルーフのもと業種や国境を超えた連携・共創を促進し、国際課題であると同時に地域創生の鍵でもあるネイチャーポジティブ実現を支えるハブとなることを目指しています。宮城県南三陸町、佐賀県唐津市、富山県黒部川流域をはじめ複数の地域で地域サイトのモデル事業を展開しています。
(ウェブサイト https://www.naturepositive-hub.jp/)
【用語説明】
注1. ネイチャーポジティブ
"2020年を基準として、2030年までに自然の喪失を回復基調に逆転させ、2050年までに完全な回復を達成する"という世界的な社会目標。2022年12月に開催された生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)において新たに設定された。
注2. ミティゲーション・ヒエラルキー
まず悪影響を回避し、避けられない場合は影響を軽減し、残った影響は自然の再生で補い、最後に仕組みそのものをより良く(変革)するという優先順位づけの考え方。
【備考】
本手引きは利用者の責任において自由に利用・改変および再配布できますが、改変・再配布する際は出典を明示し、本条文を併せて記載のうえ、事前に原作成者へご連絡ください。
<報道に関するお問い合わせ>
アミタホールディングス株式会社
広報 担当:駒井、藤岡
TEL:075-277-0795 / メール:press@amita-net.co.jp
<内容に関するお問い合わせ>
地域のネイチャーポジティブ活動の手引きお問い合わせ窓口
メール:np-hub_tebiki@grp.tohoku.ac.jp
アミタに関するお問い合わせはこちらから
アミタのニュースリリース配信をご希望の方はこちらから




