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「未来デザイン」論(2020年3月11日)

東京五輪を控え、期待と共に幕を開けた2020年ですが、新型コロナウイルスの影響で社会に不安が拡散し、混乱を伴うスタートとなりました。

小中高校・特別支援学校等の臨時休校、出勤・出張・イベント等の自粛、観光客の激減等により、人々の暮らしにも国内外の経済にも多大な影響が出ています。また、トイレットペーパーやティッシュペーパー等、実際には安定供給が見込まれている一部の衛生製品が品薄になる事態や、国籍や見た目による根拠のない差別的な行動も発生しています。非常時に助け合い、知恵を出し合って困難を乗り越えようとする人々がいる一方で、不安の連鎖によって不必要に資源を奪い合い、傷つけ合うことを止められない我々。

こうした状況に気付かされることは、人間には「弱い欲求」と「強い欲求」がある、ということです。

弱い欲求とは、他人と共感したり、助け合ったり、集ったりすることへの欲求です。こうした社会的な行動によって幸福感を得たいという想いは、多くの場合、弱くささやか、かつ不確実で儚いものですが、基本的には、宗教を超え、民族を超え、国家を超え、学歴を超え、性別を超え、年齢を超え、およそすべての人間が等しく有する、人類共通の欲求だと考えられます。

これに対し「名誉が欲しい」「贅沢をしたい」「美しくありたい」「人より多くを手にしたい」といった欲求はかつて、主に中世の貴族や王族の一部の特権階級の人たちが持つ欲求でした。

しかしその欲求の強さ、単独性は、個人単位で切り売りしやすく、貨幣価値に換算しやすく、分析がしやすい。一言でいうと、お金になりやすいのです。そのため、こうした「利潤動機(損得判断)」に基づいた行動が、主として市場経済を形成してきました。

産業革命期には、有産階級(資本家等)と無産階級(労働者等)の間に中産階級が誕生し、彼らの欲求を満たす形で、受注生産に代わり見込み生産による大量生産が主流となっていきました。

そして、こうした強い欲求・欲望を満たす市場の誕生は、人々に夢をもたらしてきました。産業革命以降、地球がストックしてきた地下資源から燃料・原料を手に入れた人類は、蒸気機関による機関車、内燃機関による自動車や飛行機というモノを生み出し、それに付随するコトも生み出しました。次いで、電気を駆動力とするモーターが生まれ、家電をはじめ続々と新たな商品・サービスが生み出されてきました。さらには、エネルギーに代わり情報を駆動力とするインターネットが登場しました。2000年前後にAmazonやGoogleが株式上場し、2005年前後にはブログやSNSといったコミュニケーションサービスが次々と生み出されました。以来、EC(電子商取引)市場は急速に拡大し、SNSは新しいメディアとしての地位を確立しましたが、反面、情報を駆動力としたイノベーティブな商品・サービスや新たな市場は見受けられていないように思います。

このように、とりわけ国内では既存市場が定常化の兆しを見せる一方で、過度な資源利用により、気候変動・資源枯渇をはじめとする環境・社会リスクは膨張し続けています。この先、私たちが迎えるのは、資源・エネルギー・食料を武力や政治力で奪い合う社会でしょうか?それとも、中央集権型のシステムにより、地球全体の資源・エネルギー・食料が分配される、究極の管理社会でしょうか?

私たちアミタはそのどちらでもない、産業が発展すればするほど自然と人の関係性が豊かになる、持続可能社会の実現を目指しています。この未来創りを加速させるべく、2021年には「未来デザイン企業」としての事業活動を本格的に開始しようとしています。

「デザイン(design)」という言葉の語源には幾つかの説がありますが、私たちはこの言葉を、接頭辞「de」から、以下のような意味と解釈しています。

de」の意味

「下へ向かう」
(例:decrease

後ろに続く言葉に対する否定
例:decrescendo)

design」の意味

de(下へ)+sign(しるしをつける)
=下図を作ること、計画すること

de(否定)+sign(記号)
=記号を超える記号

目に見えない人々の「情動(心の動き)」を基に、未来創りの下絵を描き、それが多くの人々の情動と共振・共鳴するという感覚を持つことができた時、具現化するために構想を描き、構築を設計し、実践すること。さらにその完成が、既存の価値を超えること。これが「デザイン」の本質だと考えています。

つまり「未来デザイン」とは、まだ具象化されていない人々の心のメッセージに気付き、その人々の情動が共感し合う領域を認識し、形にすることです。そして、この想いと目的を同じくする者は、属する組織に関わらず協働し、共創する。そんな「co-creation system」(共創体制)を構築することが、未来デザインにおいては効果的だと考えています。

持続可能社会の実現のためには「経済的動機性」よりも「社会的動機性」が優先する産業を創り出さなければなりません。そのためには、前述したような人間の"弱くささやかな"、言い換えれば"あてにならない"欲求を"あてになる"、すなわち安定的な市場に変えていく仕組みが必要です。

私達が掲げる未来の社会デザイン像は「持続可能」という夢のために生み出されるコトやモノが、購買されればされるほど、その理想に近づく社会です。「夢の実現」という行動動機は、経済的動機性ではなく社会的動機性に基づくものです。この社会的動機性が、不確実性でなく確実性を伴って把握できる行動情報の可視化が、私達が目指す「持続可能社会」では必須になります。

201912月より開始した奈良県生駒市の実証実験や、2018年に行った宮城県南三陸町での実証実験で設置されたステーションは、まさにこの"あてにならない"とされている社会的動機を、"あてになる"ものとして機能させる仕組みを目指して設計しました。「ごみ」という誰もが日常的に関わる行為を通して自ずと、地域の人や自然を想う行動を取ることができる、というものです。

この仕組みを動かしているのは、内燃機関・電気等の「運動の駆動力」、そしてインターネット等の「情報の駆動力」の、次なる駆動力。人々が他者のために行動する「心の駆動力」です。

この社会的動機性によって機能する仕組み・装置を、私たちは「ハートウェア」と呼んでいます。この「ハートウェア」を実現する手段として、ハードウェアやソフトウェアを駆使する。これを以て自然資本と人間関係資本を増幅させる産業界のエコシステムこそが、私達が目指す「未来デザイン」です。

このような新しい市場を、アミタは「心産業―Mindustry(マインダストリー)」※と名付けました。

モノを売る「product in」の時代から、コトを売る「market in」の時代を経て、ユメを売る「mind in」の時代へのシフトが、今始まりつつあります。

本年の啐啄同時は、私たちが未来デザインとして掲げる「エコシステム」について、有識者の方々と共に思考を深めていく予定です。ご期待ください。

2020年3月11日
アミタホールディングス株式会社
代表取締役 熊野英介

※「心産業―Mindustry(マインダストリー)」については、以下の連載をご参照ください。

第5回「ポスト近代社会~持続可能な産業と社会システム~」(2017年9月11日)
第6回「第二の公」-持続可能社会の運営システム-(2017年11月13日)

参考図書

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