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バリア(障害)をバリュー(価値)に変える―生きる意味を探した先に、新たな社会ニーズがあった②

自己表現としてのビジネス―与えられた命を、いかに生きるか

熊野:これからの市場をどう見ていますか?

垣内さん:今後も医療水準はどんどん上がっていくでしょうから、若くて重度の障害者は減ってくると思います。僕にとっては複雑な話ですが、ある国では、僕と同じ病気の子どもはいないんです。遺伝性の障害なので。シャットアウトできるんです。僕の両親は、生まれてくる子の足に障害があると分かりながら、僕や弟を産んだ。一方で、体外受精による遺伝のカットや中絶という選択肢もある。

これは、どちらが良くてどちらがダメなのか、という話ではないと思います。医療も環境も、どちらも進歩していくべきです。僕は、社会のバリアフリー化が進むことで「歩けないくらいなら産んでも大丈夫だね」という社会にしたい、と思っています。

また僕は今、普通に見たり聞いたり出来ていますが、高齢になると、見えづらく、聞こえづらく、歩きづらくなってくる。つまり高齢者のニーズとは、障害者のニーズを統合したものなんです。今、高齢者と障害者を合わせて、約3人に1人の日本人が何らかの不便を抱えています。
まずは日本の障害者が生きやすい環境・社会制度・インフラを整え、わざわざ「障害」と表現しなくてもよくなる社会を目指したい。それは高齢化が進む日本にとって、必要な変化だと思いますし、世界にも伝えていけるメッセージだと思います。

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熊野:改めて伺いますが、垣内さんが考える「障害」とは何ですか?

垣内さん:この考えは、僕は生まれて30年変わっていないのですが、障害は「無い方がいいに決まっている」。

ただし「不幸ではなかったな」と、今では思えてきました。やっぱり車椅子だからこそ、気づけたこと、出会えた人、挑戦や学びがあった。最終的には死ぬ間際に「(障害が)あってよかった」と思えることが、少しでも増えていたらいいなと思っています。

熊野:「不幸ではない」、とても大切なメッセージだと思います。近代では、多くの人が幸せになろうと頑張った結果、世界全体が不幸になり、また自分の関係範囲以外には無関心になり、利己主義的になってしまっている側面があると思います。安定を幸福と取り違えて、必要以上に私利私欲に走ったり。しかし今再び、そういった価値観が転換しつつあると思います。

起業された直後、副社長の民野さんと一緒にお会いしましたが、彼はなぜ(垣内さんと)一緒に起業されたのでしょう?

垣内さん:彼はバリアフリーや障害に、特別興味があったわけではありません。ただ垣内と一緒にやりたいと思ってくれたのではないでしょうか...。

熊野:私は垣内さんと彼(民野さん)の潜在的なニーズがシンクロしたのではないかと思っています。つまり彼は「このまま就職して、会社の言うことを聞いて、食うためだけに働く。俺の人生それでいいのかな...」と、モヤモヤされていたのではないかと。もしそうなら、現代の多くの若者が抱えるストーリーと通じるように思います。

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「生きる意味を感じられる仕事」を求める若い人たちが増えているのではないでしょうか。

私の世代では音楽をしようといってビートルズのようなバンドを目指す若者が多かったのですが、これと似た感覚で、同じ想いを持つ仲間で集まって仕事をしようという若者が増えている。ビジネスが、ある種の「自己表現」になってきている。これはとてもいいことだと思います。

自分が信じる価値を世の中に問い、提供することで「意志があれば、社会を変えられる」ことを実感できる。すると傍観者ではなく、社会の当事者になることができます。

特にミライロさんの場合、高齢者や障害者の視点を顧客に伝えることで、助け合いの関係性が広がることや他者に共感することが、いかに楽しいかといった「社会的動機性」を軸にビジネスを展開されている。こういった企業が増えていけばSDGsの理念の1つ「誰一人取り残さない」社会の実現も不可能ではないと思います。

垣内さん:例えば、45,000年前のネアンデルタール人の社会でも障害者がちゃんと生かされていたという記録が残っているし、江戸時代には針・灸・あんまが、見えない・聴こえない特性を活かした仕事として広がりました。今揺り戻しのように、そういった人間本来の良心を前提とした社会が再び求められてきていると思います。

また近年でも、平成元年当時働いている障害者は195千人だったのが、30年経った現在では80万人が働いている。状況はどんどん良くなっています。そうした先人の想いを継いでいくのが、僕の使命だと思っています。

熊野:「人間の尊厳」から「生命の尊厳」の時代に突入しつつあると思います。「人間の尊厳を守る」べく発展してきた近代社会は、結果として、深刻な公害問題や地球規模の環境問題を引き起こしてしまいました。「私という人間に与えられた命を、いかに生きるか」という、命に対する謙虚な姿勢。そのことが実は、人生を豊かにするものだと、私は思います。また人間だけではなく生命を尊重し、社会を持続可能にしていくことが、これからの企業の使命ではないでしょうか。

最後に「命」というものに、人一倍向き合ってこられた垣内さんからメッセージをお願いします。

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垣内さん:振り返ると「歩きたい、障害を克服したい」と思っていたのは、誰のためでもない、自分のためでした。でもそこから「歩けないから出来ること」を探し続けた結果、自分の時間が「自分のため」だけではなく「誰かのため」になっていると思える瞬間、エゴから始まったビジネスで「ありがとう」と言ってもらえる瞬間が、増えていきました。

僕と同じ病気の人は短命の方が多いのですが、だからこそ自分に「長さではなく幅にこだわれ」と言い聞かせています。寿命は変えられない。でも幅は太くしていける。限りある時間を誰のために使うのかを日頃から意識し、目の前の人に向き合うよう心がけています。

熊野:「幅」というのはつまり「関係性」で、それが人生を豊かにするという、ということですね。非常に共感します。これからの社会は、システムに依存し安心を求めた近代から、互いに信頼しあえる、新しい共同体の時代に突入していくと思います。

ミライロさんには、そんな時代をリードする存在として、今日お伺いしたメッセージを伝え続けていただきたいです。


mirairo08.jpg<対談者>

  • 垣内俊哉さん(株式会社ミライロ代表取締役社長)

2009年立命館大学経営学部大学2 回生の時に民野剛郎氏とValue Added Networkを創業。2010年ユニバーサルデザインのコンサルティングを主な事業とする株式会社ミライロを設立、代表取締役社長に就任。第11回 キャンパス・ベンチャー・グランプリ大阪 ビジネス大賞、2013年「みんなの夢AWARD3」最優秀賞を受賞など受賞歴多数。同年一般社団法人日本ユニバーサルマナー協会の代表理事に就任。2014年日経ビジネス「THE 100 ― 2014 日本の主役」において日本を変える100人として選出される。

  • 熊野 英介 :アミタホールディングス() 代表




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■2019年連載「信頼の世紀―微力なれども無力ではない―」

アミタホールディングス株式会社の代表取締役である熊野英介のメッセージを、動画やテキストで掲載しています。2019年度啐啄同時は「信頼の世紀―微力なれども無力ではない―」をテーマに、「誰一人取り残さない」持続可能な未来創造に取り組まれている方々との対談をお送りしてまいります。

これまでの「啐啄同時」一覧


■代表 熊野の書籍『思考するカンパニー』

2013年3月11日より、代表 熊野の思考と哲学を綴った『思考するカンパニー』(増補版)が、電子書籍で公開されています。ぜひ、ご覧ください。

※啐啄同時(そったくどうじ)とは

鳥の卵が孵化するときに、雛が内側から殻をつつくことを「啐(そつ)」といい、これに応じて、母鳥が外から殻をつついて助けることを「啄(たく)」という。雛と母鳥が力を合わせ、卵の殻を破り誕生となる。この共同作業を啐啄といい、転じて「機を得て両者が応じあうこと」、「逸してはならない好機」を意味するようになった。

このコラムの名称は、未来の子どもたちの尊厳を守るという意思を持って未来から現代に向けて私たちが「啐」をし、現代から未来に向けて志ある社会が「啄」をすることで、持続可能社会が実現される、ということを表現しています。